近年、日本における熟年離婚の割合が急増しています。特に、2022年には同居期間が20年以上の夫婦の離婚割合が23.5%に達し、過去最高を記録しました。この現象の背後には、長寿社会の影響や役職定年による収入減少が深く関わっています。本記事では、これらの要因を詳しく分析し、熟年離婚が増加する背景と、その社会的な影響について考察します。
役職定年が離婚のきっかけに?
役職定年は、熟年離婚の重要な要因の一つとして挙げられます。役職定年とは、一定の年齢に達した社員が管理職から外される制度で、多くの場合、これに伴って年収が大幅に減少します。この収入減少が夫婦間に経済的な不安をもたらし、結果として離婚に至るケースが増加しているのです。
厚生労働省の2022年の統計によると、離婚全体の件数は17万9099組と減少傾向にありますが、同居期間が20年以上の夫婦の離婚件数は3万8991組で、依然として高止まりしています。特に、「役職定年」をきっかけに夫婦間の関係が悪化し、熟年離婚に至るケースが増えていると専門家は指摘しています。
NPO法人・日本家族問題相談連盟の理事長である岡野あつこ氏は、「1950年頃の男性の平均寿命は約58歳で、定年後の人生はそれほど長くありませんでした。しかし、現在の男性の平均寿命は81歳と大幅に延びています。これにより、子どもが独立した後の夫婦の時間が長くなり、その結果、性格の不一致などが表面化しやすくなっています」と述べています。
平均収入の変化とインフレーションの影響
また、平均収入の変化やインフレーションも、熟年離婚の増加に影響を与えています。長寿化が進む中で、退職後の生活がますます長期化し、その間の生活費や医療費などの支出が増大しています。特にインフレーションが進行することで、物価が上昇し、年金や退職金だけでは生活が苦しくなるケースが増えているのです。
これにより、経済的なプレッシャーが夫婦間のストレスを増大させ、離婚を選択する夫婦が増えていると考えられます。堀井亜生弁護士は、「以前は夫の定年退職がきっかけで離婚するケースが多かったが、最近はその前段階での離婚相談が増えています」と述べており、経済的な不安が離婚を促進していることが伺えます。
熟年離婚の社会的影響
熟年離婚の増加は、個々の夫婦だけでなく、社会全体にも大きな影響を及ぼしています。まず、離婚後の生活設計が重要な課題となります。特に、熟年離婚では年金の分割や財産分与が問題となり、生活水準が大きく変わる可能性があります。さらに、高齢期における一人暮らしの増加が、孤独死や健康問題のリスクを高めることにもつながると考えられています。
また、熟年離婚によって家庭が分裂することで、子どもや孫などの家族関係にも影響が及ぶことが懸念されています。高齢期における家庭の安定は、次世代の精神的な支えとなるため、その重要性が再認識されるべきです。
結論: 熟年離婚の増加をどう捉えるべきか
熟年離婚の増加は、長寿社会や経済環境の変化による必然的な現象とも言えます。しかし、その背後には、夫婦間のコミュニケーション不足や将来設計の不安など、個々の問題が潜んでいます。今後、熟年離婚を防ぐためには、夫婦が共に老後を見据えた計画を立てることや、定期的なコミュニケーションを図ることが重要です。
また、社会全体としても、熟年離婚に対するサポート体制を整えることが求められます。具体的には、役職定年後の生活設計や再就職支援、カウンセリングサービスの充実が必要です。熟年離婚は一過性の問題ではなく、長期的な社会課題として取り組むべきテーマです。
このように、熟年離婚の背景には複数の要因が絡み合っていますが、その解決策もまた多岐にわたります。夫婦間の問題解決に向けた取り組みが進むことで、熟年離婚の増加傾向が緩和されることを期待したいと思います。
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